* 10 *
いつもと同じ朝が来る。
窓の外から、元気な小鳥のさえずり声が響いてくる。
薄い毛布にくるまって、ごろりと転がる。
どてん。
「きゃうっ!」
ベットから落ちて目が覚めた。
・・・・・・あー、ドジしたぁ。
寝ぼけまなこで、半身を起こす。
あたしの腕に、自分の髪が絡みついてきた。
・・・・・・え・・・・・・・
あたし、いつのまにこんなに髪長かったっけ?
いつもと変わらない朝。
いつもと変わらない、小屋の中の景色。
いつもと変わらない、コーヒーをいれてるお父さん。
なのにそれが、変わって見えるのは・・・・・・・・・・・。
それを見ている、あたしの目線の高さが、少しだけ変わったから。
「おはよう、お父さん」
お父さんは、もう仕事に取りかかってる。
削りたての木の、すがすがしい香りがした。
「さっきまでねー、ここに来た日の夢見てたよ、すっごくリアルなの。目が覚めたら、いきなり今日になっててびっくりした」
手鏡を覗きながら、髪に櫛を入れた。
「ねぇ・・・・・・、お父さん」
あたしは鏡の中の自分から目を離さないまま、話す。
曇った銀色の手鏡の端に、お父さんが、手に持っていた彫刻刀を置いて、こちらを見ている姿が、小さく映っている。
「あたし・・・・・・、また、旅に出てもいいかなぁ・・・・・・・・・」
静かに、お父さんと向き合った。
窓の外の、木の葉が擦れる音が、やけに大きく耳に届く。
お父さんは、穏やかな笑顔を浮かべる。
そして、言った。
ゆっくりと。
ささやくように。
「十四歳の誕生日おめでとう、チア」
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